会社を倒産させてしまった経営者のメンタルについて4つの時系列で正直に話す

普段、あまり表に出ることがない「失敗」の話。調べても弁護士のサイトで集客目的で書かれたページか、倒産を経験したことのある順風満帆に日々を過ごしている経営者の話しか出てこなかった。この記事では、そんな倒産の実体験とその苦悩ついてありのままを綴りました。

第一フェーズ:倒産の示唆

倒産前──毎日が闘い、出口の見えない恐怖

倒産前の段階で最もつらいのは、「まだなんとかなるかもしれない」という期待と現実のギャップです。 資金繰り表を何度見返しても数字は変わらないのに、見るたびに「もしかしたら」と期待してしまいます。

この時期の心理は「まさか自分が」という状態。経営者は倒産を認めたくない。認めた瞬間に、従業員への説明、取引先への対応、自分の将来──すべてに向き合わなければならないからです。昼間は平常を装い、夜になると不安で眠れなくなります。

なんとか巻き返そうと金融機関への追加融資の相談、ビジネスローンの申込み、ファクタリング申請などを慌てて探し始めます。銀行は「晴れの日に傘を貸し、雨の日に取り上げる」で有名ですが、当然です。誰もピンチの会社にお金を貸したくありません。

正社員が数十人もいたので固定費がバカにならない状態で、1ヶ月をどうにか工面してもその先の明るい未来は想像できませんでした。

このプレッシャーを誰とも共有できない。どこにも向けられない怒り・葛藤・恐怖を、毎日一人で抱えていました。

でも、経営者としての敗北を認めることにしました。破産もお金がないと出来ないからです。いろんな情報を集め、状況を冷静に分析し、資金繰りを計算し、「今ならまだ止血できる」と明確にわかりました。逆に、「今やらないと取り返しのつかないことになる」ということもわかったのです。

トータルで弁護士5人をあたりました。そのうち2人には受任を断られました。残キャッシュが少ないことがネックだったり、ビジネスローンやファクタリングなどを動いてしまっていることが問題だったようです。
最後に面談した弁護士は穏やかに話を聞き、質問には的確に答え、状況を真摯に受け止めてくれて圧倒的に信頼感がありました。こればっかりは感覚ですし、破産の手続き自体には優劣が出る部分ではない(つまり弁護士の腕で決まるものではない)のですが、担当者との相性はめちゃくちゃ大事です。絶対に何社も面談を受けたほうがいいです。

第二フェーズ:従業員への解雇通知

決断時──体が動かなくなった数日間

ここが一番キツかったです。間違いなく、人生で一番キツい局面でした。

「もう無理だ」と悟った瞬間、心だけでなく身体にも異変が出ました。 これは「気力の問題」ではなく、慢性的なストレスが限界を超えたときの身体的な反応だと思います。

何が一番キツいかと言うと、従業員へことの説明をしなければならないのに、受任通知を出すその日まではいつも通り会社を経営している“フリ”をしなければならなかったことです。従業員へ倒産を悟られてはいけないのです。
もう潰すことを決めているのに、利益を出すための意思決定やアドバイスをし続ける。毎日アサインされるミーティング。将来こんなことしたいねという展望の話。従業員とのコミュニケーション一つひとつ全てが猛烈にツラいです。

会社によってはもしかしたら「この会社ヤバそうだな」と感じている社員もいるかもしれません。これは会社のメンバーの役職であったり、ふだんのコミュニケーションだったり、いろんなケースがあるでしょう。

従業員へ解雇通知を出すその日までの数日間は、ほとんど起き上がれませんでした。1日16時間近く眠っているのに、身体はまったく休まりません。毎晩のように追い詰められる悪夢を見て、目が覚めても体が鉛のように重い。会社の喪失感、12人の従業員への不甲斐なさ、取引先や顧客への申し訳なさが一度に押し寄せました。もともと患っていたうつ病が再発した可能性もあります。

第三フェーズ:申し立て手続き

受任通知後──最大の責務を果たした安堵と、残る不安

従業員へ伝えてからというものの、かなり心は軽くなりました。
「ふざけんなよ」「給料すぐ払え」そんなこと言われてもおかしくないだろうなと思っていたのですが、そして不思議と責められなかったです。なんならその日、最後に皆で集まって話をしていたのですが「今まで良い思いを沢山してもらったし、もしみんなが再就職成功したら社長に奢ってあげよう」みたいな話をしていました。これまで社員を無下にしたことはいなかったとは言え、この局面でこのようなセリフが出てくるのは、改めて素晴らしい社員たちに囲まれたなと思いました。

ただ、実際に出社がなくなり、そして失業保険や再就職の手続きに追われると従業員はそれなりにストレスが溜まってきます。数日も経てば会社や社長へ怒りがふつふつと湧いてくることでしょう。再就職の際にリファレンスの協力をしたり、転職のアドバイスをしたりはしましたが、過度にサポート入ることは禁物とし、必要最低限のコミュニケーションに留めることをおすすめします。

ちなみに弁護士から受任通知が送られたあとは、債権者からの督促は止まります。貸金業法第21条第1項第9号に基づき、弁護士が受任通知を送付すると、債権者は本人への直接連絡を停止しなければなりません。
なので受任通知が債権者に対して届き、それを本人たちが確認したら督促は止まります。支払日を超えた段階では「お支払いがないのですが」という連絡はどうしてもきてしまいます。

そして、「すべてが楽になった」わけではありません。将来への漠然とした不安や、ふとした瞬間に襲う罪悪感は残ります。それでも、決断前の「出口が見えない恐怖」とは質が違います。やるべきことは明確な状態に変わるのです。

わたしの場合は個人の銀行口座(仮想通貨取引所も含む)は10を余裕で超えており、ログインできなかったり、キャッシュカードや通帳がなかったりして、過去の取引履歴を集めるのがすこぶる大変でした(経営していたときもこういう事務的な作業がほんとうに苦手でした)。

あとは直近の収支家計表について提出しなくてはならないので、日々の記録を事細かに記録しておくことを推奨します。デビットカードを使用すればすべて履歴から判別できるので問題ないのですが、現金を使った場合には記録もレシートもないでしょうから要注意です。

第四フェーズ:免責後

債権者集会──免責が降りてから

私は従業員への解雇通知を出してから、破産申立をするまでに3ヶ月ちょっとかかり、債権者集会が開かれるまでに半年要しました。ですので、受任通知を出してから破産申立をするまでの期間に相当生活は再建されている状態です。

私は受任通知を出した直後から、すぐに仕事探しを始めました。もちろん転職サイト・エージェントには登録しましたし、クラウドソーシングに登録したり、自分のスキルと関連ある仕事紹介のサービスに登録したり、SNSを使って業務委託の募集を探したり、営業をしたりしました。

社長は失業保険がもらえません。未払いの役員報酬だって受け取れません。私は役員報酬を多くとっていなかったですし、貯金しないタイプなので口座は本当にすっからかんでした。すぐに収入を得る必要がありました。

申し立てをするまでの3ヶ月の間にもう仕事の基盤はほとんどできていました。

免責が降りるまで不安かもしれませんが、破産申立が受理されている確率は約96%。よっぽどのことがない限りは受理されます。財産を隠したり、事実を隠蔽したり、しっかりと手続きに向き合っていれば国の制度がきっと助けてくれます。安心して目の前の稼ぐことや、自分の未来に集中しましょう。

メンタルを守るために重要な3つのこと

破産は初めての経験で、何も知識はありませんでしたが、調べて判断する能力は比較的高いおかげで、特段苦労することはありませんでした。ですが、破産を通じて、メンタルがおかしくなってしまう人は山ほどいます。

「これだけはやっとけ」ということもそうですし、私が「こういう心構えでいるといいかもね」みたいなことを経験則から共有させてもらいます。

とにかく受任通知

→取引先や金融機関に対してはこれを送れば督促の連絡が一切自分に来なくなる。問題は従業員への解雇通知を直接自分の言葉で伝えなければいけないのでしんどいが乗り越える必要がある。これが経営者としての最後の仕事と思って歯を食いしばって乗り切るしかありませんが、受任通知さえ出してしまえば一切のことは弁護士に集約されるのでとにかくこの手続きを進めましょう。

オンライン心療内科の受診を検討する

メンタルは完全に壊れてしまうと、回復にまじで時間がかかります。少しでも「おかしい」と感じた段階で動くことが、最重要と言っても過言ではありません。

しかも、うつ病って実は種類がいくつもあるんです。私の場合は「非定型」というタイプなのですが、人によって症状も千差万別なので、共通の「これが効果的」みたいな施策が本当にありません。

症状や度合いにもよりますが、うつ病になってしまうと、基本的には社会で働くことはできないでしょう。イメージの何倍も何倍もツラいです。出社どころか、欠席の連絡すらまともにできないと思います。ならないで済むのであれば、絶対にならないほうがいいです。

OopsHEARTなどのオンライン診療がおすすめです。LINEで相談できたりするので、周りにはこれを勧めています。

日常を取り戻す

→フリーランスとしてでも、個人事業主としてでも、とにかく自分で仕事をしたほうがいい。日常的に仕事をしていないとあっという間におかしくなってしまう。あとは手続きに関しては事務作業と割り切って、それ以外は何も考えずにちゃんと食べてちゃんと寝る。運動もしたほうがいい。ある程度負荷がかかる運動がおすすめ。私は週2で妻とテニスをするようになって本当に救われた。

最後に

倒産の話って、書いている人が「あの頃はしんどかったけど今は幸せです」という文脈で語ることがほとんどです。嘘じゃないと思う。というか「幸せじゃないです」という人はそもそも表に出さないし、今まさにしんどい状況にいる人には、あまり届かない。

一つだけ事実としてお伝えすると、わたしが一番しんどかったのは倒産を決断するまでではなく、決断をしてから受任通知を出すまでの期間です。

倒産決断までは出口が見えない。誰にも言えない。判断の重さを全部一人で抱えている。言葉を聞くと一見ツラそうに見えますが、経営者なんてそんなことの連続じゃないですか?日常茶飯事です。状況さえ正しく理解できればドライに意思決定をするだけでした。それよりも従業員や取引先にその事実を隠し続けること、そして従業員と面と向かって事実と向き合うことが何よりもツラかったです。誠実に経営していた証拠でもあると思うので、この痛みからは逃げずに乗り越えましょう。

誰かの参考になれば。

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