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2010年代にIT系の会社を創業。2026年1月、法人破産・自己破産を決断し、現在手続きを進めています。
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「自己破産したら、弁護士にも税理士にもなれないのだろうか」
破産後のキャリアを考えたとき、「士業」という選択肢が頭をよぎる人は少なくありません。資格を取って独立すれば、破産からの再起につながる。でも、「欠格事由」という言葉を見て、不安になった。そんな状況ではないでしょうか。
この記事では、自己破産と士業登録の関係について、士業ごとの根拠法令を比較表で整理しながら解説します。さらに、破産後に士業(行政書士)を目指すことを実際に検討した筆者の判断プロセスもお伝えします。
読み終えるころには、「自分が士業を目指すべきか、別の道を選ぶべきか」を判断するための材料が揃っているはずです。
結論:自己破産しても、復権すれば士業登録はできる
自己破産すると士業の「欠格事由」に該当しますが、この制限は一時的なものです。 免責許可決定が確定すれば「復権」し、欠格事由は自動的に消滅します。
つまり、「自己破産したら一生士業になれない」は誤解です。
制限される期間は、破産手続開始決定から免責許可決定の確定まで。目安として3〜6ヶ月程度です(破産法第255条第1項第1号)。この期間を過ぎれば、法的には士業の登録に支障はありません。
もうひとつ、見落とされがちな重要な事実があります。
士業の試験を受けること自体は、破産中でも制限されません。 制限されるのは「登録」だけです。つまり、破産手続中に試験勉強をして、受験して、合格することは可能です。登録は復権後にすればいい。
【私の場合】
法人破産・自己破産を決断した直後、「もう士業にはなれないのか」と思った瞬間がありました。行政書士に興味があったので、欠格事由の条文を調べた。弁護士法、税理士法、行政書士法——どれも「破産者で復権を得ない者」が欠格事由に挙げられていた。
「復権を得ない者」。この一文に目が止まりました。裏を返せば、復権すれば欠格ではなくなる。免責が確定すれば復権する。永久に閉ざされる道ではなかった。この事実を知ったとき、少し息がつけた感覚がありました。
士業ごとの欠格事由と根拠法令
士業によって欠格事由の根拠法令は異なりますが、共通しているのは「破産者で復権を得ない者」が登録できないという点です。
以下に主要な士業の欠格事由を整理します。
| 士業 | 根拠法令 | 条文 | 欠格事由の要旨 | 試験受験 |
|---|---|---|---|---|
| 弁護士 | 弁護士法 | 第7条第5号 | 破産者で復権を得ない者 | 可能 |
| 税理士 | 税理士法 | 第4条第2号 | 破産者で復権を得ない者 | 可能 |
| 行政書士 | 行政書士法 | 第2条の2第2号 | 破産者で復権を得ない者 | 可能 |
| 司法書士 | 司法書士法 | 第5条第3号 | 破産者で復権を得ない者 | 可能 |
| 社会保険労務士 | 社労士法 | 第5条第3号 | 破産者で復権を得ない者 | 可能 |
| 公認会計士 | 公認会計士法 | 第4条第4号 | 破産者で復権を得ない者 | 可能 |
| 弁理士 | 弁理士法 | 第8条第4号 | 破産者で復権を得ない者 | 可能 |
| 不動産鑑定士 | 不動産の鑑定評価に関する法律 | 第16条第3号 | 破産者で復権を得ない者 | 可能 |
| 土地家屋調査士 | 土地家屋調査士法 | 第5条第3号 | 破産者で復権を得ない者 | 可能 |
表を見ればわかるとおり、すべての士業で「試験の受験」は制限されません。 制限されるのは「士業会への登録」のみです。
この区別は極めて重要です。たとえば、破産手続中に行政書士試験に合格することは法的に何の問題もありません。合格証書は交付される。登録は、復権してからすればいいのです。
弁護士(弁護士法第7条第5号)
弁護士法第7条第5号は、「破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者」を弁護士となる資格を有しない者(欠格事由)と定めています。
既に弁護士として登録している人が破産した場合も、欠格事由に該当し、登録は取り消されます。ただし、復権後に弁護士会に再登録の申請が可能です。
税理士(税理士法第4条第2号)
税理士法第4条第2号も同様に、「破産者で復権を得ないもの」を税理士となる資格を有しない者としています。
税理士の場合、登録は日本税理士会連合会に対して行います。復権後の再登録は、通常の登録手続きと同じです。破産歴を理由に再登録を拒否する規定はありません。
行政書士(行政書士法第2条の2第2号)
行政書士法第2条の2第2号は、「破産者で復権を得ないもの」を欠格事由としています。
行政書士は、破産・債務整理分野で活動する士業の中では比較的試験のハードルが低いとされています(合格率は例年10%前後)。破産経験者が新たに目指す士業としては、現実的な選択肢のひとつです。
司法書士(司法書士法第5条第3号)
司法書士法第5条第3号が欠格事由を定めています。司法書士も債務整理業務を扱う士業であり、破産経験が実務上の強みとなりうる分野です。ただし、試験の難易度は士業の中でも高い部類に入ります(合格率は例年4〜5%前後)。
社会保険労務士(社労士法第5条第3号)
社会保険労務士法第5条第3号が欠格事由を規定しています。社労士は労務管理の専門家であり、債務整理分野とは領域が異なりますが、企業再建のコンサルティング分野で破産の知見が活きる場面があります。
公認会計士(公認会計士法第4条第4号)
公認会計士法第4条第4号が欠格事由です。公認会計士試験は士業の中で最も難易度が高い部類ですが、復権後であれば登録に支障はありません。
その他の士業(弁理士・不動産鑑定士・土地家屋調査士等)
弁理士(弁理士法第8条第4号)、不動産鑑定士(不動産の鑑定評価に関する法律第16条第3号)、土地家屋調査士(土地家屋調査士法第5条第3号)——いずれも「破産者で復権を得ない者」を欠格事由としています。
共通しているのは、復権すれば欠格事由は消滅するという点です。どの士業であっても、免責許可決定が確定すれば登録への法的な障害はなくなります。
制限されない士業・資格はあるか?
すべての士業が破産で制限されるわけではありません。 また、「士業」以外の国家資格には、破産が欠格事由に含まれないものが多く存在します。
中小企業診断士
中小企業診断士は、中小企業支援法に基づく資格ですが、欠格事由に「破産者で復権を得ない者」が含まれていません。破産中であっても登録が維持される可能性があります。
ただし、登録更新の要件(実務従事要件等)を満たせるかは別の問題です。
士業以外で制限されない主な国家資格
- 医師: 医師法に欠格事由として「破産者」は含まれていない
- 看護師: 保健師助産師看護師法にも「破産者」は欠格事由にない
- 教員: 教育職員免許法にも「破産者」は欠格事由にない
これらの資格は、破産の影響を受けずに活動を続けられます。
→ 資格制限の全体像(士業以外も含む)は「自己破産と資格制限|制限される資格・されない資格の一覧」で詳しく解説しています。
→ 公務員を目指す場合は「自己破産しても公務員になれる?」をご覧ください。
制限される期間はいつからいつまで?——復権の仕組み
欠格事由に該当する期間は、破産手続開始決定から免責許可決定の確定までです。 多くの場合、3〜6ヶ月程度で復権に至ります。
当然復権(自動的に復権するケース)
破産法第255条第1項第1号に基づき、免責許可決定が確定すると自動的に復権します。 裁判所への申立や手続きは不要です。
同時廃止事件(財産がほとんどない場合)なら3〜4ヶ月、管財事件でも6ヶ月〜1年程度が目安です。免責許可決定が確定した時点で、士業の欠格事由は自動的に消滅します。
申立復権(自分で復権を申し立てるケース)
免責不許可になった場合でも、破産法第256条に基づき、一定の要件を満たせば裁判所に復権を申し立てることができます。
ただし、免責不許可の場合は復権までに時間がかかります。破産法第255条第1項第3号により、破産手続開始決定から10年が経過すれば当然復権しますが、10年は長い。免責不許可にならないよう、破産手続きは誠実に進めることが重要です。
免責不許可のリスク
免責不許可になるケースは限定的です。破産法第252条第1項が定める免責不許可事由(浪費、ギャンブル、財産隠し等)に該当しなければ、ほとんどの場合、免責は許可されます。
とはいえ、「ほとんどの場合」であって「全ての場合」ではありません。士業の登録を見据えるなら、免責許可を確実に得ることが最優先です。
【私の場合】
免責許可決定が確定した日のことは、よく覚えています。弁護士から連絡が来て、「確定しました」と言われた。
実感はすぐには湧きませんでした。でも、しばらくして「これで欠格事由が消えた」と気づいたとき、不思議な安堵がありました。「行政書士を目指す道がある」「将来、士業に転じる選択肢が残されている」——そう思えたことが、精神的な支えになりました。
【体験談】破産後に「士業を目指す」という選択肢を考えた話
法人破産・自己破産を決断した後、「次にどう食べていくか」を真剣に考えました。
候補はいくつかありました。サラリーマンに戻る。フリーランスとして独立する。そして、士業の資格を取る。
行政書士に興味を持った理由
行政書士に興味を持ったのは、破産手続きの中で弁護士の仕事を間近で見たことがきっかけでした。
弁護士は債務者の話を聞き、書類を整え、裁判所とやり取りし、債権者と交渉する。その過程で、「破産の経験があること」が実務上の強みになる場面があると感じました。債務者の不安、手続きに対する恐怖、「人生が終わった」という絶望感——それを実体験として理解している士業は、相談者にとって心強い存在になれるはずです。
弁護士を目指すのは現実的ではない。でも、行政書士なら試験のハードルは相対的に低い。許認可業務のほかに、相続や法人設立の分野で活動できる。破産・債務整理分野に特化した行政書士として、破産経験を「強み」に変えられるのではないか。
そんなことを考えていました。
最終的に士業を選ばなかった理由
結論から言うと、私は士業の道を選びませんでした。
理由はシンプルです。すぐに収入が必要だった。
行政書士試験は年1回、11月に実施されます。合格率は10%前後。仮に試験勉強に半年〜1年を費やし、合格したとしても、その間の収入はどうするのか。破産直後の状態で、貯蓄を取り崩しながら試験勉強に集中する余裕がありませんでした。
もし貯蓄に余裕があれば、行政書士を目指していたかもしれません。「破産経験のある行政書士」という肩書きは、債務整理の相談を受ける際に大きな信頼につながると今でも思っています。
私が選んだ道
最終的に選んだのは、一人法人(マイクロ法人)で経営スキルをそのまま活かす道でした。固定費を極限まで下げ、既存の取引先からの受注で最低限の収入を確保する。試験勉強の時間はなかったけれど、営業力や提案力は残っていた。
これは私の場合の判断であって、正解は人それぞれです。時間と資金に余裕があるなら、士業の資格取得は破産後の再起として非常に合理的な選択肢だと考えています。
破産後に士業を目指すなら知っておくべき3つのこと
破産中でも試験勉強・受験はできる
繰り返しになりますが、これは最も重要なポイントです。
破産手続中であっても、士業の試験を受けることに法的な制限はありません。 制限されるのは「登録」であって「受験」ではない。
つまり、破産手続中に勉強を始め、試験に合格し、復権後に登録するという計画は法的に何の問題もありません。むしろ、制限期間(3〜6ヶ月)を有効に使って試験勉強に充てるのは、合理的な時間の使い方です。
復権後の登録手続きの流れ
復権後の士業登録は、通常の新規登録と基本的に同じ手続きです。
- 各士業の試験に合格する
- 免責許可決定が確定する(=復権する)
- 所属する士業会(弁護士会、税理士会、行政書士会等)に入会申請する
- 登録審査を受ける
- 登録完了
既に登録していた人が復権後に再登録する場合も、手続き上は新規登録に準じます。「破産歴がある」という理由だけで登録を拒否する法的な根拠はありません。
「破産歴」は登録審査でどう扱われるか
法律上、復権した破産者は「破産者で復権を得ない者」には該当しません。欠格事由は消滅しています。
ただし、実務上の懸念がゼロかと言えば、正直なところ不確かな部分もあります。登録審査は各士業会が行うため、運用は士業会ごとに異なります。
確実に言えるのは、法的には復権後の登録を拒否する根拠がないということです。不安がある場合は、復権後に各士業会の窓口に事前相談することをおすすめします。
→ 就職への影響全般が気になる方は「自己破産は就職に影響する?」をご覧ください。
→ 転職先にバレるか心配な方は「自己破産は転職でバレる?」で詳しく解説しています。
まとめ
士業の欠格事由について:
- 自己破産すると、ほとんどの士業で「欠格事由」に該当する
- ただし、これは一時的な制限。復権(免責許可決定の確定)で自動的に消滅する
- 制限期間の目安は3〜6ヶ月
重要な区別:
- 試験の受験は制限されない。制限されるのは「登録」のみ
- 破産手続中に勉強・受験・合格することは法的に問題ない
- 復権後の登録手続きは、通常の新規登録と基本的に同じ
破産後のキャリアとしての士業:
- 破産経験は、債務整理分野では「弱み」ではなく「強み」になりうる
- 時間と資金に余裕があれば、士業の資格取得は合理的な再起ルート
- 行政書士は試験のハードルが相対的に低く、破産経験を活かしやすい分野がある
破産しても、士業という再起の道は閉ざされていません。欠格事由は一時的。復権すれば、法的には同じスタートラインに立てます。
→ 資格制限の全体像は「自己破産と資格制限|制限される資格・されない資格の一覧」をご覧ください。
→ 士業以外の再起の道は「自己破産後に起業する方法」で解説しています。
→ 就職全般への影響は「自己破産は就職に影響する?」をご覧ください。
この記事の情報について
本記事は筆者の個人的な経験に基づいています。士業の欠格事由や登録手続きに関する具体的な判断については、必ず弁護士等の専門家にご相談ください。
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