この記事を書いた人
2010年代にIT系の会社を創業。2026年1月、法人破産・自己破産を決断し、現在手続きを進めています。
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「代表取締役」と書いていた名刺を捨てて、白紙の履歴書を前にしたとき——何を書けばいいのか、まったくわからなかった。
何百通もの履歴書を「見る側」だったはずの自分が、書く側に回っている。そのギャップに、しばらく手が動かなかった。
この記事では、破産後の履歴書の書き方について解説します。自己破産を履歴書に書く必要があるのか、会社が倒産した場合の職歴の書き方、空白期間の説明方法まで、法的根拠と実体験をもとにお伝えします。
読み終えるころには、「何をどう書けばいいか」が具体的にわかり、手が動き始めるはずです。
結論:自己破産を履歴書に書く必要はない
自己破産したことを履歴書に記載する法的義務はありません。
理由は明確です。自己破産は犯罪ではなく、破産法に基づく「民事手続き」だからです。
履歴書の賞罰欄にある「罰」は、刑事罰(懲役・禁固・罰金)を指します。自己破産は裁判所の手続きですが、刑事事件ではありません。つまり、賞罰欄に書く対象ではないのです。
面接で自己破産について聞かれた場合も、答える義務はありません。自己破産の情報は官報に掲載されますが、一般企業の採用担当が官報を確認することはまずありません。信用情報機関のデータも本人以外は閲覧できません(割賦販売法第35条の3の56、貸金業法第41条の35)。
ただし、ここで混同してはいけないことがあります。
「自己破産を書かなくていい」ことと、「会社の倒産を書かなくていい」ことは別の話です。会社の倒産は職歴上の事実なので、履歴書には記載します。次のセクションで具体的な書き方を解説します。
→ 就職への影響の全体像を知りたい方は「自己破産は就職に影響するのか?」をご覧ください。
会社が倒産した場合の履歴書の書き方【例文つき】
従業員の場合:「会社都合により退職」と書く
勤めていた会社が倒産した場合、退職理由は「会社都合により退職」と記載します。
倒産による退職は、本人の能力や意思とは無関係です。転職市場でマイナスに評価されることはありません。むしろ「会社都合退職」は「すぐに働ける人材」として好意的に見られることもあります。
【履歴書 職歴欄の記載例】
令和○年○月 株式会社〇〇 入社
○○部に配属、○○業務に従事
令和○年○月 会社都合により退職(会社倒産のため)
記載時の注意点は3つです。
- 「解雇」とは書かない。倒産による退職は解雇ではなく「会社都合退職」が正確な表現です
- 会社名は正式名称で記載する。倒産した会社であっても、勤務していた事実は変わりません
- 倒産の詳しい理由は書かない。「会社倒産のため」の一文で十分です。経緯は面接で聞かれたら簡潔に答えましょう
自分に非がない退職です。堂々と書いて問題ありません。
経営者の場合:代表取締役の職歴をどう書くか
経営者が会社を潰した場合、履歴書には「就任」と「退任」で記載します。
ここが従業員との大きな違いです。代表取締役は会社との間に雇用関係がなく、会社法上の「委任契約」(会社法第330条)で結ばれています。そのため「入社」「退職」ではなく、「就任」「退任」が法的に正確な表現です。
【履歴書 職歴欄の記載例(経営者)】
令和○年○月 株式会社〇〇 設立
代表取締役に就任
令和○年○月 破産手続開始決定により退任
いくつか補足します。
- 「設立」は自分で創業した場合に記載します。途中から代表取締役になった場合は「代表取締役に就任」のみで構いません
- 「破産手続開始決定により退任」が法的に正確な表現です。法人が破産すると代表取締役は当然に退任します(会社法第330条、民法第653条2号の委任終了事由)。「倒産により退任」でも意味は通じます
- 事業内容や従業員数は職務経歴書に書く。履歴書の職歴欄はシンプルにとどめ、詳しい実績は職務経歴書で展開します
多くの経営者が「倒産した会社の職歴をどう書くか」で手が止まります。でも、やることはシンプルです。事実を正確に記載するだけです。
職務経歴書で経営実績を「武器」に変える
倒産した会社であっても、経営実績は職務経歴書で強力な武器になります。
採用担当者が見ているのは「何をしたか」です。「なぜ辞めたか」ではありません。経営者として培ったスキル——事業構築、組織マネジメント、財務管理、顧客開拓——は、多くの企業が求めるものです。
倒産したという結果は変えられませんが、その過程で積み上げた実績は消えません。数値で語れるものは全て書きましょう。
【職務経歴書の記載例(経営者)】
■ 株式会社〇〇(令和○年○月〜令和○年○月)
事業内容: ○○関連サービスの企画・開発・運営
従業員数: 最大○名
役職: 代表取締役
【主な実績】
・創業から○年で年商○千万円の事業を構築
・○○業界向けのサービスを企画・開発し、法人顧客○社を獲得
・営業組織を0名から○名体制へ構築
・資金調達○千万円を実行(銀行融資、補助金等)
ポイントは数字を入れることです。「売上を伸ばした」ではなく「年商○千万円」。「チームを作った」ではなく「○名の組織を構築」。具体的な数字は説得力を持ちます。
「会社を潰した人間の実績なんて」と思うかもしれません。でも、0から事業を立ち上げ、組織を作り、顧客を開拓した経験は、倒産したからといってなかったことにはならないのです。
空白期間をどう書くか、面接でどう説明するか
履歴書上の空白期間の扱い
破産手続き中の空白期間(半年〜1年程度)は、無理に埋める必要はありません。
履歴書の職歴欄には「なぜ空白だったか」を書く欄がそもそもありません。面接で聞かれたら答えれば済む話です。
ただし、空白期間が長い場合(1年以上)は、職歴欄の最後に一言添えておくと丁寧です。
令和○年○月 破産手続開始決定により退任
(事業整理に伴い離職)
令和○年○月 求職活動開始
使える表現をいくつか挙げます。
- 「事業整理に伴い離職」——最もニュートラルな表現。事実を簡潔に伝えられる
- 「個人的事情により離職」——詳細を伏せたい場合に使える
- 「会社清算手続きのため離職期間あり」——法人破産ではなく清算の場合
空白期間は「何もしていなかった」期間ではありません。事業の整理、債権者対応、法的手続き——やるべきことに追われていた期間です。その事実を簡潔に示せば十分です。
面接で「なぜ会社を潰したのか」と聞かれたら
聞かれる可能性はあります。でも、答えに詰まる必要はありません。
面接官の意図は「失敗の詳細を聞きたい」ではなく、「この人は失敗から何を学んだのか」を見ることです。だから、倒産の経緯を延々と話す必要はない。3つのポイントを押さえれば十分です。
1. 事実を簡潔に(1文で終わらせる)
「資金繰りの悪化により、法人破産の手続きを取りました」
これだけで十分です。倒産の原因を詳しく説明する必要はありません。聞かれたら補足すればいい。
2. 学びを語る
「振り返ると、○○の判断が遅れたことが大きな原因でした。この経験から、数字に基づいた早い意思決定の重要性を痛感しています」
失敗を「なかったこと」にするのではなく、「何を学んだか」に変換する。面接官が聞きたいのはここです。
3. 前を向く
「この経験を活かして、御社の○○の領域で貢献したいと考えています」
過去の失敗で話を終えない。必ず「これからどう活かすか」で締める。
やってはいけないことも明確です。会社の悪口を言わない。取引先や銀行への恨みを語らない。自分を被害者として描かない。面接は「過去の弁明の場」ではなく「未来の貢献を提案する場」です。
→ 経営者の転職活動の全体像は「40代経営者の転職活動」で詳しく解説しています。
→ 転職先にバレるか心配な方は「自己破産は転職でバレる?」をご覧ください。
【体験談】社長だった自分が初めて「履歴書を書く側」に立ったとき
「履歴書を書く」。たったそれだけのことが、こんなに重いとは思わなかった。
経営者として10年以上、何百通もの履歴書を「見る側」にいた。書類選考で不採用にしたことも、面接で「うちには合わない」と断ったことも数えきれない。
その自分が、白紙の履歴書を前にしている。
【私の場合】
法人破産の手続きを進めながら、「この先どうやって食っていくか」を考える時期がありました。再就職も選択肢のひとつとして検討し、まず履歴書を書いてみることにしたのです。
手が止まったのは、職歴欄でした。
「代表取締役に就任」——そう書いた瞬間、その下に「破産手続開始により退任」と書かなければならない現実が迫ってくる。経営していた会社の名前、従業員の数、年商。書けば書くほど「これだけのものを作ったのに、潰してしまった」という感情が湧いてくる。
でも、書き進めるうちに、少し見え方が変わりました。
0から会社を立ち上げたこと。顧客を開拓したこと。組織を作ったこと。失敗に終わったとはいえ、確かに「やってきたこと」がある。履歴書を書く行為は、自分のキャリアを棚卸しする行為でもあったのです。
結果的に、この履歴書を提出する機会はありませんでした。
再就職ではなく、既存の取引先への直接営業で仕事を獲得する道を選んだからです。「自分のスキルを必要としてくれる人に、直接提案する」——経営者時代にやっていたことと同じでした。
この経験から気づいたことがあります。破産したからといって「就職しなければならない」わけではないということです。
履歴書を書かない道もある:起業・フリーランスという選択肢
破産=再就職ではありません。起業やフリーランスなら、そもそも履歴書が必要ありません。
「破産した人間が起業なんてできるのか」と思うかもしれません。法的には、一切の制限がありません。破産法上、免責許可決定が確定すれば(わかりやすく言うと「借金の返済義務がなくなる裁判所の決定が出れば」)、起業を含むあらゆる経済活動が自由にできます。
破産手続き中であっても、事業活動そのものは禁止されていません。法人の代表取締役への再就任には制限がある場合がありますが、個人事業主として活動することは可能です。
【私の場合】
私が「履歴書を書かない道」を選んだのは、経営者として培ったスキルが、就職市場よりも独立市場で活きると判断したからです。
営業力、顧客との関係構築、プロジェクト管理——これらは「会社の看板」がなくても使えるスキルでした。実際、破産手続き中に既存の取引先に「個人として仕事を受けられます」と連絡したところ、複数の案件をいただくことができました。
履歴書を書く必要がなかったのは「就職しなくてよかった」からではありません。「自分で仕事を獲りにいく力が、経営者時代に身についていた」からです。
経営者が持っているスキルを整理してみます。
- 営業・顧客開拓: 新規の顧客を見つけ、提案し、受注する力
- プロジェクト管理: 複数の案件を同時に進め、納期を守る力
- 財務管理: 売上・コスト・利益を管理する力
- 意思決定: 不確実な状況で判断を下す力
これらは全て、フリーランスや起業で直接使えるスキルです。
もちろん、全員にこの道が合うわけではありません。安定した収入が必要な状況なら、就職の方が合理的です。ただ、「履歴書を書かなければならない」という前提自体を疑ってみる価値はあります。
→ 破産後の起業について詳しく知りたい方は「自己破産後に起業はできる?方法と注意点」をご覧ください。
まとめ:破産後の履歴書で覚えておくこと
自己破産と履歴書:
- 自己破産を履歴書に書く法的義務はない(民事手続きであり、賞罰欄の「罰」に該当しない)
- 信用情報は本人以外閲覧できない。採用担当が調べる手段はない
- 面接で聞かれても答える義務はない
会社倒産の職歴の書き方:
- 従業員: 「会社都合により退職(会社倒産のため)」
- 経営者: 「代表取締役に就任」→「破産手続開始決定により退任」
- 空白期間: 「事業整理に伴い離職」で簡潔に
面接で聞かれたら:
- 事実を1文で簡潔に → 学びを語る → 未来の貢献で締める
- 失敗の弁明ではなく、貢献の提案をする
そして、もうひとつ:
- 就職だけが道ではない。起業・フリーランスなら履歴書自体が不要
- 経営者としてのスキルは、独立市場で活きる
- 「履歴書を書かなければならない」という前提を疑ってみてほしい
破産は、キャリアの終わりではありません。書き直しです。
この記事の情報について
本記事は筆者の個人的な経験に基づいています。法的な判断(告知義務の有無、賞罰欄の解釈等)については、具体的なケースに応じて弁護士等の専門家にご相談ください。
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