会社倒産で従業員がやるべきこと完全チェックリスト【経験者が解説】

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2010年代にIT系の会社を創業。2026年1月、法人破産・自己破産を決断し、現在手続きを進めています。この記事は、経営者として従業員の解雇を経験した立場から、「従業員側が知っておくべきこと」をまとめたものです。
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「会社が倒産する」と告げられた瞬間、頭が真っ白になるのは当然です。何をすればいいのかわからない。誰に聞けばいいのかもわからない。でも、やるべきことは確実に存在します。しかも、その多くには期限があります。

この記事では、実際に勤務先の倒産を経験した筆者が、従業員としてやるべきことを優先順位と期限つきのチェックリストにまとめました。失業保険の手続き、未払い給与の請求方法、健康保険の切り替えまで、すべて具体的な窓口と期限を記載しています。

このチェックリストに沿って一つずつ進めれば、「知らなかった」で損をすることなく、次のステップへ移れます。ブックマークして、手続きを一つ済ませるたびにチェックしてください。

目次

【結論】倒産を告げられたら最初の3日でやること

最初の3日間で済ませるべきことは3つです。 感情の整理は後回しで構いません。まず動いてください。

  1. 給与明細・勤怠記録・就業規則のコピーを確保する(当日中)
  2. 離職票の発行を会社または管財人に確認する(翌日まで)
  3. ハローワークに行く日を決める(3日以内)

なぜこの3つが最優先なのか。理由は「証拠の消失」です。

会社が破産手続きに入ると、クラウドシステムのアカウントが削除されたり、社内サーバーが停止したりします。給与明細や勤怠記録が電子データだけの場合、アクセスできなくなる可能性があります。これらの書類は、失業保険の申請や未払い賃金の請求で必要になります。データが消えた後では取り戻せません。

確保すべき書類を具体的にリストにします。

書類用途確保方法
給与明細(直近6ヶ月分以上)未払賃金の立替払申請、失業保険の算定PDFダウンロードまたはスクリーンショット
勤怠記録(タイムカード等)未払残業代の請求根拠印刷またはスクリーンショット
就業規則退職金規定の確認社内ポータルからダウンロード
雇用契約書雇用条件の証拠原本があればコピー
解雇通知書(解雇予告通知書)会社都合退職の証拠会社から受け取る
源泉徴収票確定申告に必要会社から受け取る

【私の場合】
経営者としてお伝えすると、破産手続きの受任通知を送った翌日には、クラウド型の勤怠管理システムや経費精算システムの解約手続きが始まりました。従業員が自分のデータにアクセスできる時間は、実質的に1〜2日しかありませんでした。「明日でいいか」と思っていると手遅れになります。私は従業員に対して「今日中にデータを保存してほしい」と伝えましたが、この一言がなければ証拠を失っていた人もいたはずです。

感情は後回しでいい。まずは「証拠の確保」から始めてください。

倒産後の手続きチェックリスト【時系列順】

やるべきことは多いですが、期限順に並べれば一つずつ片づけられます。以下のチェックリストを上から順番に進めてください。

当日〜3日以内

やること期限手続き先備考
給与明細・勤怠記録・就業規則のコピー確保当日中社内システムPDF・スクショで保存
解雇通知書(解雇予告通知書)の受領当日会社口頭のみの場合は書面を要求
離職票の発行依頼翌日まで会社または破産管財人発行に2週間前後かかる
健康保険証の返却確認3日以内会社コピーを取ってから返却
会社貸与物(PC・携帯等)の返却確認3日以内会社私物データのバックアップを先に

解雇通知書は、口頭で「解雇します」と言われただけでは不十分です。書面での交付を求めてください。書面がないと、後から「自己都合退職だった」と主張される可能性があります。

1週間以内

やること期限手続き先備考
ハローワークで求職申込み・離職票の提出できるだけ早く住所地のハローワーク身分証明書・印鑑・写真2枚・通帳持参
国民健康保険への切り替え退職後14日以内市区町村役場保険料の減免制度あり
国民年金への切り替え(第1号被保険者)退職後14日以内市区町村役場年金手帳・離職票が必要
健康保険の任意継続を検討退職後20日以内加入していた健康保険組合国保と保険料を比較してから判断

離職票は通常、退職後10日〜2週間で届きます。ただし、倒産の場合は会社の事務処理が滞り、届くまでに時間がかかることがあります。届かない場合は、ハローワークに相談すれば「仮手続き」で求職申込みができます。離職票なしでも窓口に行く意味はあります。

1ヶ月以内

やること期限手続き先備考
未払賃金立替払制度の申請準備管財人の証明書発行後労働基準監督署管財人から「証明書」が届いてから申請
住民税の納付方法確認退職翌月市区町村役場特別徴収→普通徴収への切り替え
源泉徴収票の受け取り退職後1ヶ月以内会社または管財人届かない場合は税務署に相談

半年以内

やること期限手続き先備考
確定拠出年金(企業型DC)の移換手続き退職後6ヶ月以内国民年金基金連合会手続きしないと自動移換され手数料が発生
確定申告(年末調整が済んでいない場合)翌年3月15日まで税務署還付を受けられるケースが多い

【私の場合】
経営者として破産手続きを進める中で、従業員の手続きがスムーズに進むよう、使える制度と窓口をまとめた書面を全員に配布しました。それでも、離職票の発行が管財人を通すため想定以上に時間がかかり、従業員から問い合わせが相次ぎました。離職票が届かなくてもハローワークに行けば仮手続きができる、という情報を事前に伝えておけばよかったと反省しています。

リストを上から一つずつ。焦る必要はありません。期限だけ守れば大丈夫です。

失業保険──倒産なら自己都合より圧倒的に有利

倒産による離職は「特定受給資格者」に該当します。 自己都合退職と比べて、給付制限なし・給付日数の優遇という2つの大きなメリットがあります。

雇用保険法第23条に基づき、倒産・解雇等による離職者は「特定受給資格者」として扱われます。自己都合退職との違いを比較します。

項目会社都合(倒産)自己都合
給付制限なし(7日間の待期期間のみ)7日+2ヶ月の給付制限
最大給付日数330日150日
被保険者期間の要件6ヶ月以上12ヶ月以上
国民健康保険料の減免あり(最大2年間)なし

この差は非常に大きいです。例えば40歳で勤続15年の場合、会社都合なら最大270日分の基本手当が受給できます。自己都合なら120日分です。日額5,000円として計算すると、差額は75万円にもなります。

手続きの具体的な流れ

  1. 離職票を受け取る(会社または管財人から届く)
  2. 住所地のハローワークに行く(持ち物:離職票、身分証明書、印鑑、写真2枚、通帳またはキャッシュカード)
  3. 求職申込みをする(窓口で記入)
  4. 雇用保険受給者初回説明会に出席(日時は窓口で案内される)
  5. 7日間の待期期間を経て受給開始

ここで絶対にやってはいけないことがあります。退職届を出さないでください。

会社から「手続きのために退職届を書いてほしい」と言われるケースがあります。これに応じると、離職理由が「自己都合退職」として処理される可能性があります。倒産による解雇であれば、退職届は不要です。離職票の「離職理由」欄が「事業主の都合による離職」になっているか、必ず確認してください。

もし離職理由が間違っていた場合は、ハローワークの窓口で異議を申し立てられます。

離職票が届かない場合

倒産の場合、会社の事務処理能力がなくなっているため、離職票が届くまでに1ヶ月以上かかることがあります。届かない場合は、以下の手順で対応できます。

  1. ハローワークに直接行き、「会社が倒産して離職票が届かない」と伝える
  2. ハローワークから会社または管財人に催促してもらう
  3. それでも届かない場合、ハローワークの職権で「仮の受給資格決定」を受けられる

【私の場合】
経営者として離職票の発行手続きを管財人と進めましたが、全従業員分の書類を整えるまでに約3週間かかりました。その間、従業員から「まだ届かないのですが」という問い合わせが何件もありました。従業員の中には、ハローワークに先に行って仮手続きを済ませた方もいました。結果的に、その方が受給開始も早かったです。「離職票がまだ届かない」という理由でハローワークへ行くのを先延ばしにしないでください。

特定受給資格者としての権利を必ず活用してください。最重要は「退職届を出さない」こと。

→ 会社の倒産で従業員がどのような影響を受けるかの全体像は「会社倒産で従業員はどうなる?」で解説しています

未払い給与・退職金の立替払制度

会社に支払い能力がなくても、国の制度で未払い給与の最大80%が戻ってきます。 これを知らなければ申請できません。ここで確実に把握してください。

賃金の支払の確保等に関する法律(賃確法)第7条に基づく「未払賃金立替払制度」は、会社が倒産した際に未払いとなっている賃金や退職金の一部を、独立行政法人労働者健康安全機構が立て替えて支払う制度です。

対象となる賃金

対象具体例
未払い賃金定期賃金(月給)、残業代
未払い退職金就業規則等に基づく退職金
対象外賞与(ボーナス)、解雇予告手当、役員報酬

立替払の対象は、破産手続き開始決定日の6ヶ月前の日から2年間に退職した従業員の、退職日の6ヶ月前の日から立替払請求日の前日までに支払期日が到来している未払賃金です。

立替払の上限額

立替払される金額は、未払賃金総額の**80%**が上限です。さらに、退職日の年齢によって上限額が設定されています。

退職日の年齢未払賃金の上限額立替払の上限額(80%)
30歳未満110万円88万円
30歳以上45歳未満220万円176万円
45歳以上370万円296万円

例えば42歳で3ヶ月分の給与(合計120万円)が未払いの場合、120万円×80%=96万円が立替払されます。上限額(176万円)以内なので、満額が対象です。

申請の流れ

  1. 破産管財人(裁判所が選んだ弁護士)から「証明書」が届くのを待つ
  2. 証明書を持って労働基準監督署に申請書を提出する
  3. 労働者健康安全機構が審査し、指定口座に振り込まれる

申請期限は、破産手続き開始決定日の翌日から2年以内です。2年を過ぎると時効で申請できなくなるため、証明書が届いたら早めに申請してください。

管財人からの証明書がいつ届くかは、破産手続きの進行状況によります。目安として、破産手続き開始決定から1〜3ヶ月程度です。届かない場合は、管財人(弁護士)に直接連絡して確認できます。管財人の連絡先は、破産手続き開始決定の通知書に記載されています。

【私の場合】
経営者の立場からお伝えすると、従業員への最後の給与が一部未払いになりました。管財人から従業員に対して立替払制度の案内と証明書が送られましたが、制度自体を知らなかった従業員もいました。「よくわからないから放置した」という方がいないよう、経営者としてあらかじめ制度の概要を書面で配布していました。この記事を読んでいる方は、ぜひ管財人からの証明書を受け取ったら速やかに労基署に申請してください。

未払い給与は泣き寝入りする必要はありません。制度を知って、期限内に申請することがすべてです。

→ 未払い給与・退職金の請求方法の詳細は「会社倒産時の退職金・未払い給与の請求方法」で解説しています

健康保険・年金の切り替え

退職後は、健康保険と年金の切り替え手続きが必要です。 手続きをしないと、無保険状態になったり、後から保険料をまとめて請求されたりします。期限は退職後14日〜20日以内です。

健康保険の選択肢

退職後の健康保険は、主に2つの選択肢があります。

選択肢期限保険料の目安メリット
国民健康保険退職後14日以内前年の所得に応じて算定倒産離職なら保険料が最大70%減額される
任意継続退職後20日以内退職時の標準報酬月額の約2倍(上限あり)扶養家族がいても追加保険料なし

倒産による離職の場合、国民健康保険料の「非自発的失業者の軽減制度」が適用されます。前年の給与所得を30/100として計算するため、保険料が大幅に下がります。国民健康保険法施行令に基づく制度で、離職日の翌日から翌年度末までが対象期間です。

任意継続は、退職前の健康保険をそのまま最大2年間継続できる制度です(健康保険法第37条)。ただし、在職中は会社が半額負担していた保険料を全額自己負担するため、保険料は退職前の約2倍になります。

どちらが安いか、必ず市区町村の窓口で保険料を確認してから判断してください。 倒産離職であれば、多くの場合は国民健康保険の方が安くなります。

国民健康保険への切り替え手続き

  1. 市区町村の役場に行く
  2. 持ち物: 離職票または雇用保険受給資格者証、身分証明書、年金手帳
  3. 窓口で「倒産による離職」であることを伝え、保険料の減免を申請する

年金の切り替え

厚生年金から国民年金(第1号被保険者)への切り替えが必要です。退職後14日以内に市区町村の窓口で手続きしてください。持ち物は年金手帳(または基礎年金番号通知書)と離職票です。

保険料の支払いが厳しい場合は、「免除・猶予制度」を利用できます。失業中であれば、所得に関わらず保険料の全額免除が認められるケースがあります。窓口で相談してください。免除期間も年金の受給資格期間に算入されるため、「払えないから放置する」よりも確実に有利です。

扶養家族がいる場合、配偶者が第3号被保険者(会社員の扶養)から第1号被保険者に切り替わる手続きも必要です。忘れがちなので注意してください。

健康保険と年金の切り替えは、期限を過ぎると不利益が生じます。退職後すぐに市区町村役場へ行ってください。

有給休暇・退職届・解雇予告手当──よくある疑問

倒産時に従業員が抱えやすい疑問をQ&A形式でまとめます。 一つずつ確認してください。

Q1: 有給休暇は消化できるのか?

消化できます。 解雇予告から解雇日までの間に、残っている有給休暇を取得する権利があります。労働基準法第39条に基づく権利であり、会社の経営状況に関わらず行使できます。

ただし、即日解雇(解雇予告なし)の場合は物理的に消化する期間がありません。この場合は、解雇予告手当の支払いを求めることができます。

Q2: 退職届は出す必要があるか?

出す必要はありません。 倒産による解雇は「会社都合退職」です。退職届は自己都合退職の際に提出するものであり、会社都合退職では不要です。

会社から「形式的に退職届を書いてほしい」と求められても、応じないでください。退職届を提出すると、離職理由が「自己都合」として処理されるリスクがあります。自己都合退職になると、失業保険の給付制限(2ヶ月)が発生し、給付日数も大幅に減ります。

もし既に提出してしまった場合は、ハローワークで離職理由について異議を申し立てることができます。「会社が倒産したのに自己都合扱いになっている」と窓口で説明してください。

Q3: 解雇予告手当はもらえるのか?

即日解雇の場合、30日分の平均賃金を受け取る権利があります。 労働基準法第20条に基づき、使用者は少なくとも30日前に解雇予告をするか、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければなりません。

「30日前に予告」と「30日分の平均賃金」は組み合わせも可能です。例えば、20日前に予告された場合は、10日分の解雇予告手当を請求できます。

ただし、会社が破産している場合、実際に支払われるかは会社の資産状況によります。解雇予告手当は「財団債権」として優先的に扱われますが(破産法第149条第1項)、会社に資産がなければ支払われない可能性もあります。

Q4: 源泉徴収票はもらえるのか?

必ず受け取ってください。 年末調整が済んでいない場合、確定申告が必要です。確定申告をすれば、払いすぎた所得税が還付される可能性があります。

源泉徴収票が届かない場合は、管轄の税務署に「源泉徴収票不交付の届出」を提出すれば、税務署から会社(または管財人)に交付を指導してもらえます。

Q5: 会社の備品(PC・携帯等)はどうするのか?

会社の備品は返却が原則です。ただし、返却先が不明な場合は管財人に連絡してください。返却前に、私物のデータ(写真・メール等)は必ずバックアップを取ってください。 破産手続きが始まると、会社の備品は管財人が管理するため、後から取り出すことはできません。

Q6: 未払いの残業代は請求できるのか?

請求できます。 未払い残業代は、破産手続きにおいて「財団債権」または「優先的破産債権」として扱われます。未払賃金立替払制度の対象にもなります。ただし、請求するためには勤怠記録(タイムカード・出退勤ログ等)が証拠として必要です。冒頭で述べた「当日中のデータ確保」が重要な理由はここにもあります。

【私の場合】
経営者として従業員の解雇を告げた際、「退職届は出さなくて大丈夫です。会社都合退職として処理します」と明確に伝えました。それでも不安そうにしている従業員が何人かいたので、使える制度をまとめた書面を渡しました。口頭だけでは、動揺している状態で情報を受け取りきれません。この記事が、その書面の代わりになればと思っています。

まとめ:やることチェックリスト

やるべきことは多いですが、優先順位をつければ一つずつ片づけられます。最後に、全体を要約したチェックリストを掲載します。

優先度やること期限手続き先
最優先証拠書類の確保(給与明細・勤怠記録)当日中社内システム
最優先解雇通知書の受領当日会社
最優先離職票の発行依頼翌日まで会社/管財人
ハローワークで求職申込み1週間以内住所地のハローワーク
国民健康保険・国民年金の切り替え14日以内市区町村役場
健康保険の任意継続(検討する場合)20日以内健康保険組合
未払賃金立替払制度の申請証明書到着後速やかに労働基準監督署
住民税の納付方法確認退職翌月市区町村役場
確定拠出年金の移換手続き6ヶ月以内国民年金基金連合会

「知らなかった」で損をしないでください。 このリストにある制度は、すべて法律で定められたあなたの権利です。

会社の倒産は、あなたのせいではありません。突然の出来事に混乱するのは当然です。でも、やるべきことさえ把握すれば、一つずつ前に進めます。

困ったときの相談先:

  • ハローワーク(失業保険・求職活動): 全国ハローワーク一覧
  • 法テラス(法的トラブル全般・無料相談): 0570-078374(平日9:00-21:00、土曜9:00-17:00)
  • 労働基準監督署(未払賃金立替払制度): 管轄の監督署に連絡
  • よりそいホットライン(24時間無料相談): 0120-279-338

このチェックリストをブックマークして、手続きを一つ済ませるたびにチェックしてください。

この記事の情報について
本記事は筆者の個人的な経験と調査に基づいています。法律・制度の内容は執筆時点のものであり、変更される場合があります。具体的な判断や手続きについては、必ず弁護士・社会保険労務士等の専門家にご相談ください。

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